最初会った時から妙に懐かしくて(岡田)


◆アンケートエッセイ週間

無作為にチョイスしたいくつかの単語の中で、Twitterアンケートを実施!
今週は、それにより選ばれた『メロンパン』のワードをテーマに、劇団員によるエッセイを日替わりで掲載します。

【vol.2】

by 岡田 光司

"メロンパン"

子どもから大人まで誰しもが1度は口にした事があろう正統派菓子パン。

ふっくらとしたフォルムに程よい弾力、外はカリカリしているのに噛めば柔らかく、クリームの様なガツンと来る直接的な甘みではなく、外についてる砂糖がじわじわと口に広がるような風味豊かな優しい甘みが特徴だ。味や見た目は最先端ではない。むしろどちらかと言えば、いつでもここにいるよとほんのり囁いてくれている様な昔懐かしさを想起させてくれる菓子パンだ。


今回のエッセイのテーマである「メロンパン」について、どういった内容を書こうかと色々と頭を悩ませている時に、そもそもメロンパンって人気があるのかなぁ?とふと疑問が沸いてきた。
完全な主観ではあるし好きな人には申し訳ないのだが、メロンパンは人気がある!とは断言しづらい気がしている。凄く定番ではある、し、菓子パンとして有能でもある。比較的安価でパン自体ボリュームがあり、しかも安定感のある美味しさだ。

でももし仮に「女子大生が選ぶ好きな菓子パンランキング」が開催されても多分頑張っても4位くらいだろうな。と思うわけである。だって今みんなタピオカミルクティー好きだし。なんか韓国とか台湾で流行ってる感じのが好きじゃない。


例えばこういうサイトがある
(引用元:もぐナビ)

様々なお勧め菓子パンをランキングしてくれているサイトだが、パッと見た感じ多種多様な菓子パンの中でメロンパンは1つ、2つくらい名前が上がっている程度だ。しかもよくよく見てみると、チョコチップメロンパン、メロンパンアイスなどが挙がっている。これはもう元の型を崩しちゃってるいわゆる派生型のメロンパンだ。元々、正統派しゃべくり漫才1本で勝負をしてきたお笑いコンビが、急に漫才中にリズムネタも加えて子供ウケも狙ってみましたみたいなメロンパンだ。それはもうメロンパンであってメロンパンではない、と思っている。
が、しかし作り手側のメーカーもそうせざるを得ないのもわかる。近頃のSNS時代で、消費者の中に映えを意識する価値観が浸透し、正統派しゃべくり漫才のお笑いコンビ型だったメロンパンはその昔懐かしさだけではパンチが弱く、売れ行きを伸ばす為には、時代に則したイメチェンする必要があったのだろう。それがリズムネタのメロンパンだ。
リズムネタのメロンパンを、メロンパン美味しい好きだと騒いでる人を否定するつもりは毛頭無い。ただメロンパンは正統派漫才師よ、と。そこの所あぁたわかってて騒いでるの?と。スカルノ風に聞いてみたい心持ちではある。

なるほど、いよいよメロンパンの正体が掴めてきた。つまりメロンパンとは、優しい見た目と昔懐かしいほんのりとした甘味が最大の武器であるにも関わらず、そこに全然違う何かを加えて改良しなければ人気が上がらないというジレンマを抱えた商品であると言えるのかもしれない。とても切なく、悲しい。まさしく作り出した人間のエゴだと言える。
だからこそ、そんなメロンパンへの敬意を込めて、正統派しゃべくり漫才の部分を僕は存分に愛そうと思う。



さて、ここまでメロンパンの人気がどうだとか色々書いてきた訳だが、何故こんなに前置きが長いかと言うと、残念ながら愛すべきメロンパンとの思い出が全く思い浮かばないのだ。
エピソードが無さすぎて、【メロンパンのおかげで九死に一生を得たウチの島根のばーちゃん】とかいう大嘘エピソードを捏造しようか本気で悩んだ。本気で悩んでタイトルだけを書いてみて以降、1ミリも筆が進まなかった。だってメロンパンに助けられる状況なんてあの国民的子供向けアニメしかないじゃない。もし自信を無くして挫けそうになったらいい事だけ思い出してくるアニメじゃない。


と、いうわけで、ここまでメロンパンについて1週間ほど色々頭を悩ませて、よしメロンパンのメロンパンたる由縁を愛そうと決意を固めたものの、そこから先掘り下げるエピソードが無さすぎて自分に多少の嫌悪感を抱きながらも、なんと無しに、まぁ無いだろうけどネタとして使えるものあるかなーとスマートフォンの写真フォルダを見ていると、
え、うそ。ほんまに?



メロンパンの思い出が1つだけ存在していたのである。



今は昔、僕は大学卒業後、アパレル業界へ就職し、名古屋や金沢などで仕事をさせてもらっていた。
特に石川県の金沢には1年半ほどいた。人は暖かく食べ物も美味しく、北陸の中心地である為、都会と田舎が程よく共存しているような住みやすい土地で、第二の故郷に感じている今でも大好きな場所だ。


そして、金沢に当時住んでいた時に、北陸新幹線開通と時期が被り、開通記念にと、わざわざ遠方から北陸新幹線かがやきに乗って遊びに来てくれた大学の先輩。その方と一緒に、メロンパンを食べていた写真があったのである。

写真を見ると、あーそういえば、、、と、じわじわと思い出してきたのだが、金沢の有名な観光地である兼六園。そして21世紀美術館。ここへ先輩を案内した際に近くの路面店で買って食べたものであると思い出したのである。

しかし、この写真を見つけた時に、まず衝撃が走った。その後、僕は言い様のない無気力感に苛まれたのである。

そして昔の自分を恥じた。

いや、先程の決意をした自分を恥じた。


なぜなら、思いきりリズムネタの方のメロンパンを楽しんでいたからである

この写真が残っているということは、昔の自分はこれをインスタ映えするものだと感じたのであろう。浅はかだ。浅はかすぎて話にならない。
しかも、美味しかったのかどうか味すらもあまり憶えていない。
ただ、メロンパンが無理をしてリズムネタを取り入れた感じが、僕の金沢の思い出にはあまり"映え"ていなかった事は確かだ。

ー終幕ー

岡田 光司
2010年甲南大学演劇部「甲南一座」入部。見た目の洒落た感じからチャラいキャラが定着するのに時間はかからず、学生時代から衣装を歴任。第二次右脳爆発で初参戦、しばらく間を空けて第五次で待望のカムバック。
右脳不在中に本職で増強させたファッションセンスを見事発揮させ、LINEの衣装グループにはいつも未知の用語が溢れ出す。攻撃的過ぎるプランは不要なまでに役者をモデル化させる副作用付き。
「芝居始めて最初の役が、一発ギャグを連発する芸人役だったせいか真面目な役が来ない」と本人は振り返るが確かに第九次で10歳児を演じているあたり、そうかも知れない。

RightBrain-Explosion

劇団 右脳爆発のブログ・SNS

0コメント

  • 1000 / 1000