振り返り座談会 Vol.2【つくりもの、歪む】

2018年上演作

第八次右脳爆発『つくりもの、歪む』

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右脳爆発 振り返り座談会

『つくりもの、歪む』編

杉並祐二・大島麻季・渡辺岳・佐藤陽香


渡辺:
さて、引き続きまして第二弾、今回のテーマは『つくりもの、歪む』。

杉並:
この作品のストーリーは、本当に複雑。頭が疲れたというお客様の声もかつてなく多く、右脳サスペンスの「捻り」の極致というかね。

渡辺:
そうですねえ…捏ね繰り回しましたねえこれは…(笑)

大島:
脚本が完成形にたどり着くまで、かなり紆余曲折あったのを覚えてる。

渡辺:
もともとは、ある商業施設での会議、という密室劇だけで終わらせるはずだったんだけど。正直に言うと、途中から全く話が思い浮かばなくなった。どうしたら話を展開させていけるか、すごく悩んで…

佐藤:
結果的には、その中で劇中劇が始まり、また劇中劇中劇へと連鎖していくという重層構造に。

渡辺:
このときの前作が、第七次右脳爆発『三人分の欠陥』。見る側と見られている側、という関係が連鎖する重層構造のストーリーだったわけだけど、この作品の評判というのがどうしても頭にあって。それに引っ張られた部分は否めない。

大島:
そんな、わざわざ大変そうな方向に…

渡辺:
もう捻りに捻って自分でも混乱して、頭がどうにかなりそうになりながら書いてた。あれは…苦しかったなあ…(笑)

杉並:
いや、ちょっと思ったんだけどね。その話を聞いててむしろ驚くのは、あの脚本の書き方が「結末からの逆算じゃない」っていうところじゃない?

佐藤:
ああ、なるほど。たしかに細かく計算して書いてると言われたほうが理解が及びますね…

杉並:
事実、終演後のアンケートにも「脚本家がどういう頭の構造をしてるのか全くわからない」なんて声を頂いてて。ただそこに書いてあったのは、「まず結果から逆算してストーリーを作っているのは間違いないと思う」って(笑)

大島:
違う(笑)。でも最終的にはそんな風に見えたってことなので、やっぱりすごいよね。

佐藤:
物語のオチだけは頭にあって、とかでもなかったんですか?

渡辺:
あー…そこも全然考えてなかった…(笑)

杉並:
やべえ(笑)

渡辺:
思い返せばこの時に限った話ではないんですが、自分でも全くそのつもりなく、何気なく書いた部分が、のちのち大事な要素に繋がってくるパターンが多いんですよ。あとで冷静にセリフの内容・情報を抜き出してみると、「あ、これを伏線として乗っかっちゃえばラストシーンが作れるぞ」とか。

佐藤:
いや、それがすごいですよ…。冒頭の商業施設から、題材が「劇中劇」というところに飛躍したきっかけみたいなものは何かあったんですか?

渡辺:
もともとやりたかった題材ではあった、っていうのは大きいけど。それで連鎖する物語を考えてるうちに…なんだろう、実際に書いてる自分の想いを正当化しはじめる部分が出てくるというか。作中、浜名という脚本家が登場するんだけど(※演・川辺美紗子)、そのキャラが、割と執筆中の僕の気持ちを代弁してくれてたりする。

大島:
へえ。どういうところ?

渡辺:
「うるせえ!!こっちは脚本書いてんだよ!!」って(笑)

佐藤:
「私だって必死なんだよ!!」ってやつですか!

杉並:
追い込まれてんなー…(笑)

渡辺:
自分が脚本を書くときに考えがちなのが、そのとき溜めこんでるフラストレーションだったりストレスなんかを、なんとかして昇華させたい、っていうことなんですよね。これを脚本に活かすことで、自分が救われるんじゃないかと思ってるフシがあって。その中で、事実を自分に都合よく捻じ曲げてしまうとか…そういう過程そのものをストーリーに取り込んでみたら面白いんじゃないか。そういう発想だったかなと思います。


佐藤:
舞台装置の方に目を向けると…この作品も『パパラッチ』同様、スクリーンと影絵を使った演出が印象的でしたね。

渡辺:
「影」を使った演出は、もともと学生の頃に一度やってみたことがあるんだけど、それが自分の中ではヒットだったというか。これはいける、という手ごたえを強く感じてたのが最初で。あまり多用しすぎてもな…と思う反面、ストーリーを分かりやすく見映え良く表現するにはやっぱり丁度よかった。

大島:
でもスクリーンに綺麗に影を映そうと思うと、これがなかなか難しいんですよね…。位置取りとか決めるだけでもかなりの時間がかかったような。

杉並:
そう、それで普通に立ってるだけじゃ全くうまくいかなくて、最終的には舞台設営に使う木箱持ってきて、なんか…すげートリッキーな形に並べて上に乗って…。

佐藤:
それに支えが必要だから、出番のないキャストの方が、見えない場所から足だけ伸ばしてこっそり支えて…とかやってましたね。シリアスなシーン演じてても、視界の端にそういう光景が映るんですよ(笑)

杉並:
裏側は、正直かなり面白いことになってた(笑)。もちろんすべて瞬時に設置・撤収をしないといけないわけでね。かと思えば、その横で怒涛の早着替えが行われてて。もう、とんでもない状態!



佐藤:
舞台裏の慌ただしさでいうと、過去随一レベルでしたね。衣装の早着替えの回数も半端じゃなかった。

渡辺:
キャラクターの演じ分けと、衣装チェンジによる世界観の切り分け、っていうのはすごく重要な要素だったからね。そのぶんかなり大変な舞台裏だったけど、神楽さんがずっとサポートに動き回ってくれて。

大島:
そう!舞台裏での話をするなら、衣装担当として招聘させていただいてる、神楽さんについて触れないわけにはいかないと思う!

渡辺:
そうだね。それは是非言っておかないと。

佐藤:
こっちで衣装を受け取って、あっちで交換して、またこっちで待機して着替えさせて…もう、分刻み秒刻みの中。いつも本当に助けられてます。

杉並:
あの人、活躍度合いで言うなら香盤表の役者トップに書かれてなきゃいけないんじゃない?(笑)

渡辺:
早着替えに少しでも不備があった時、役者よりも誰よりも悔やんでるのが彼女だしね。

杉並:
そのうえ、ラストシーンの演出のための仕込みまで担当してもらってるという。(笑)

渡辺:
そういえば別の話にはなるけど、第九次右脳爆発『溝音』のときは舞台上のカーテン開閉ギミック操作をしてもらってた…。

佐藤:
だめですよ、これもう頭が上がらないですよ(笑)


大島:
あと印象に残ってることを挙げるとすると…影絵用のスクリーンに投影したタイピングの映像かな。あれが実は、本番直前、ほんとうにギリギリのタイミングで差し込んだ演出だったんだよね。結果的には、それが物語をわかりやすく伝える決め手になった。

渡辺:
脚本上、わかりにくさの解消っていうのが絶対条件ではあったんだけど…正直なところをいうと、「映像に頼る」というのはある意味、明快ではあるけれども単純とも言える。他に手はなかったかという葛藤はあった、かな。

杉並:
なるほど、ストーリー構成だけじゃなく、「演出」の部分でも、もっと凝ってみたかったと。

渡辺:
そうですね。そして、そういう想いから、次の『溝音』では完全に演出先行のつくりになった。最初に言ったように、この『つくりもの、歪む』の構成は『三人分の欠陥』に影響を受けたし、『三人分の欠陥』の構成は、ギャグ路線が印象的な『パパラッチ』のあとを受けてストーリー構成だけで勝負した…。やっぱり、連鎖なんです、これも。

大島:
なるほど…。『三人分の欠陥』ではストーリー構成に重きを置いたから、『つくりもの、歪む』では劇中劇を主軸にすることで役者に目線が行きやすくした、とも言ってたもんね。それも、そういうこと?

渡辺:
……あー。

大島:
……??

渡辺:
……そうなのかな。

佐藤:
完全に忘れてますよね?(笑)


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2018年11月17日上演
@大阪 天王寺 OVAL THEATER
脚本・演出 渡辺岳

▽あらすじ
ある商業施設で働くアルバイト店員が亡くなった
死の直前に何があったのか。
経緯を明らかにするべく
管理人は同フロアで働くスタッフを集め、情報収集を行っていた。
そこで彼らは、記憶を頼りに当時の様子を振り返り始めるが──
幾重に展開するシナリオが帰結する先とは。
右脳爆発が贈る、サスペンスミステリー。
今もどこかで、乾いた打鍵音が聞こえる…

▽CAST
自在:さこつ
浜名:川辺美紗子
甲畑:暮森芹
牧野:nao
山手:岸田功平(劇団演陣)
市岡:杉並祐二
西町:佐藤陽香
小黒:ふろむ

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