振り返り座談会 Vol.3【記憶の主義主張】

2015年上演作
第五次右脳爆発『記憶の主義主張』

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右脳爆発 振り返り座談会

『記憶の主義主張』編

杉並祐二 渡辺岳(脚本・演出)  岡田光司

渡辺:
さて、今回のテーマは第五次右脳爆発『記憶の主義主張』。

杉並:
いまだに一番好きな作品だって言ってくださる方がいたりとか、多くのご好評をいただいてる作品。本当にありがたいです。

渡辺:
近年の右脳爆発らしい謎解きと、コメディ主体の初期作品のハイブリッドというか。なかなかの、おいしいとこ取りというような作品になってるかなと思いますね。

岡田:
でも物語としては、決して単純というわけではないですよね。これ、脚本はわりとすんなり書き上がってたんでしたっけ?

渡辺:
いやいや!全然よ!(笑)かなり苦労したよ。たぶん最初の段階では、完成版とは全く違うシーンとか入ってたと思うし。

杉並:
そう、稽古してたけど舞台に乗ってない幻のシーンがあったと思う(笑)

渡辺:
このタイミングでこの展開に入るとすると、こっちの情報を先に出してた方が分かりやすくて、ならココとココのシーン順とセリフを入れ替えて…とか。けっこうギリギリまでまで試行錯誤しながら改訂を重ねてた。

杉並:
なんかパズルでもやってんのかって状態だったね。

渡辺:
なので、今でも気になってることがあるんですよ。最終的に、舞台を見たお客様にはどんなテーマの物語として伝わったのか。どういう受け取り方をしていただいてるんだろうって。

岡田:
どうなんでしょう…。結果いろんな要素が詰め込まれた話になりましたからね。

杉並:
いろんな線が繋がって繋がって。

渡辺:
お互い影響しながら、人は関わり合いながら生きてるんだよね…って、まず最初の受け止め方はそんな感じなのかなとは想像するんだけど。

岡田:
そして、やっぱり結構ホラーでもありますよね。基本コメディでポップなのに毒もあって。関わり合いの中での、人の勝手な部分も見えますし。

渡辺:
でもこれ重要なのは、右脳爆発の過去10公演の中で唯一、人が死んでない舞台だからね!(笑)

岡田:
そういう問題なのかな(笑)


杉並:
ちょっと話はブレるかもしれないけど…演者側として受けた印象とすると、なんというか、「脚本・渡辺岳」の特色であったり、ひいては右脳爆発の特性のようなものが、最も活きる物語なんだろうなって気はしたよね。

渡辺:
ああ、なるほど。だとすれば、やっぱり密室劇が得意っていうのはあるかもですね。

岡田:
同じような密室劇ということで言えば、第一次右脳爆発『塀の中からごきげんよう』もそうでしたね。個人的にはあれもすごく好きでした。

渡辺:
そう、そこが実は、この『記憶の主義主張』を書いた大きな理由のひとつにもなっててね。

杉並:
ほう。良い話題になってきた。そういうの欲しい(笑)

渡辺:
(笑)。つまりですね、第一次右脳爆発『塀の中からごきげんよう』は、当時としては、それまで書いてきた中でもかなり手ごたえのある作品だったんですよ。それがあったから、以後も劇団の活動を続けようと思えた。ただ、以降どうしても、それを超えられないという感覚がずっとあったんです。そこで考えたのが…それなら一度、パクってみようと。

岡田:
……パクる、ですか。『塀の中からごきげんよう』を?

渡辺:
そう。自分の作品を、自分でパクってみようと思った。

杉並:
なるほど面白い発想。

渡辺:
そしてその「パクる」って要素は、『記憶の主義主張』のストーリーにも繋がってくる、と。結局、この作品で最も言いたかった事は何かといえば、「いかにオリジナル作品と銘打っても、創作物というのは、必ず何かしらに影響を受けているんだ」ということなんですよ。悪い言い方をすれば、表現者というのは全員が全員、絶対に何かしらをパクっていますよと。オリジナル作品を世に出す全ての表現者に問いたい。果たしてそれは本当に、完全な、完璧なオリジナルなんですか?と(笑)

杉並:
あー…かなり大きく出てるけど大丈夫?(笑)

渡辺:
まあ、その思いを最終的にどこまで反映させることができたか疑問ではありましたから(笑)


岡田:改めてこの作品、とにかく稽古が楽しかった記憶があります。通し稽古、すごい回数やりましたよね。

渡辺:
比較的少人数での密室劇・会話劇だし、そういう点でのやりやすさはあった。

杉並:
稽古開始時刻になった瞬間、「よし、とりあえず冒頭から通してやろうか」って(笑)。キャストが誰か欠けててもスタートして、遅れてきた人が後から稽古場に入った時「あ、このシーンやってるな」って瞬時に把握して即座に合流、とかやってた。

岡田:
なんだったんでしょうね、あの一体感(笑)

杉並:
そういえば、稽古がオフの日にわざわざ役者だけカラオケに集まって話し合いしたよね。

岡田:
やりましたね!そんなことまず無い(笑)

渡辺:
改めて役の関係性とか整理して理解を深めよう、みたいな。役者サイドだけでそこまでの連携があったのも珍しいと言えば珍しい。

杉並:
珍しいと言えば、この作品は過去にないパターンで、最初からキャスト全員の役がアテ書き(※役を演じる俳優をあらかじめ決めておいてから書くこと)だったんだよね?

渡辺:
そうですね。

岡田:
そういえば最初、脚本の役名がすべて役者の本名でしたね。

渡辺:
ああ、そうだった。だからもう、完全にアテ書きだよね。それで途中、さすがにこのままだと…っていうことで、みなさん自分の役名を自分で考えてください、って(笑)

岡田:
かなり後半でしたね役名を決めたのは。自分の高校時代を振り返って、イメージの近い人を思い浮かべて名前を拝借したりとかして。

杉並:
最初の1カ月くらいずっと本名=役名で稽古してた。それもなかなか稀有な(笑)

渡辺:
脚本上、相手の名前をわざと間違えて呼ぶ、みたいなくだりもあったのにね。どうしてたっけアレ。

岡田:
なんかアドリブで毎回違う名前を適当に言ってたような…

杉並:
役名変わってからよく対応できたなあ(笑)。でも、基本人の入れ替わりもなく、密室での話だから、空気をじっくり作りやすかったというのはあるよね。

岡田:
確かに。ピンポイントでこのセリフを受けて、こういう雰囲気を作りましょう、とか細かく話しながら稽古できてました。「後ろでコンテンポラリーダンスを見ているときのリアクション」とかメチャクチャ練習しませんでした?(笑)

杉並:
すげー練習した!改めてみると、そこまでするほどの重要な部分か?(笑)

岡田:
実はすごい細かいことやってたんですよねえ。ご覧の方、どんなシーンか是非確かめてほしいです(笑)


杉並:
さて、アテ書きの話が出たついでに聞いておきたいんだけど…。僕みたいに脚本書いたことない立場からするとよくわからないところがあるんだけど、アテ書きってそんな、すんなりとできるものなの?

渡辺:
個人的にはですけど、できないことではないと思ってますけどねえ。普段からもアテ書きとまでいかなくても、役者さんを思い浮かべて「この人がこういうセリフ言ってたら面白いだろうなあ」とか、逆に「この人あまりこういう役の印象ないから、あえてやってもらったら面白いんじゃないか」とかイメージしながら書いてますしね。

岡田:
なるほど、そういう役者さんからのイメージ先行型というか。

渡辺:
役に対して、脚本書く人間がキャラクターイメージを完全に固めて役者さんに渡すことほど面白くないものはないと思うので。


YouTubeにて【全編公開中!】

2015年12月12日上演
@神戸 王子公園 イカロスの森
脚本・演出 渡辺岳

▽あらすじ
ある男の結構披露宴。
招待された4人のゲストは、青春時代の記憶を掘り起こす。
暴かれる真実、深まる謎、迫る時間…
右脳爆発が贈る、ノスタルジックサスペンスコメディ。
忘れかけていた思い出が、紆余曲折して繋がる先は。

▽CAST
石田 :杉並祐二
酒井 :伊藤晴香
谷口 :川辺美紗子
光永 :岡田光司
安本 :暮森芹
葛城①:岸田壮平
葛城②:渡辺岳

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